タイトルで手に取ってしまいました。
「働かないおじさん」「資本主義を生き延びる」
なんてキャッチーなのでしょう。
中盤くらいまでは堅苦しい経済論が多く、頭の悪い私には理解しきれない点が多かったですw。
中盤以降の目次が まあ香ばしい。
前半は堅苦しい経済論ばかりだったので、忙しい人は「従業員からの搾取」ってところから読むのが良いと思います。
この辺の感想を書いていきます。
“無能”と呼ばれた男たちが、実は一番賢かった?
「働かないおじさん」と聞いて、あなたはどんな人物を思い浮かべるでしょうか。
定時で帰り、会議では発言せず、若手の成長にも無関心。
職場の片隅で静かに息を潜めるように存在する彼らは、しばしば「生産性がない」「給料泥棒」と揶揄されます。
しかし、本書『働かないおじさんは資本主義を生き延びる術を知っている』を読んだ後、イメージが根底から覆されました。
著者は、現代の日本社会における“働かないおじさん”という存在を、単なる怠惰や無能ではなく、「資本主義の中で最も合理的に生
きる術を身につけた者」として描き出しています。
端的に言うと、彼らは過剰な自己犠牲や成果主義に踊らされることなく、組織の中で“消耗しない”ポジションを確保しています。
これは決して偶然ではなく、長年の経験と観察、そして“働きすぎることのリスク”を知っているからこそできる芸当、テクニックとしています。
本書の魅力は、単なる社会批評にとどまらず、読者自身の働き方や生き方に鋭く問いを投げかけてくる点にあると思います。
たとえば、若手社員が「成果を出して評価されたい」と必死に働く一方で、働かないおじさんは「評価されなくても生き残る」術を知っていた・・・といった具合にです。
これは果たして、どちらが“勝者”なのでしょうか?
著者は、資本主義社会において「働くこと=善」「成果=価値」という固定観念を疑い、働かないおじさんの生存戦略を通して、私
たちに“働く意味”そのものを問い直させてきます。
さらに面白かった点は、彼らが決して“何もしていない”わけではないということです。
表面上は働いていないように見えても、実は組織の空気を読み、波風を立てず、若手の暴走を抑え、時には上司の暴走もやんわりと止める、みたいな感じです。
つまり、彼らは“見えない仕事”をしているということ。
これは、成果主義では評価されにくいが、組織の安定には欠かせない役割です。
ざっと感想を述べましたが、読んでいて何度も「なるほど」と膝を打ちたくなる場面がありました。
特に「働かないおじさんは、働きすぎる若者を見て心配している」というくだり。
これは皮肉でもなんでもなく、働きすぎによる燃え尽き症候群・メンタル不調を経験してきた彼らだからこそ言える“警鐘”です。
彼らは、働き方改革の本質を誰よりも理解しているのかもしれません。
この本は、働くことに疲れたすべての人に読んでほしいです。
特に、成果を求められ続ける若手社員や、中間管理職として板挟みに苦しむ人たちにとっては、目から鱗の連続だと思います。
そして何より、「働かないこと=悪」という価値観に疑問を持ち始めた人にとって、本書はそのモヤモヤを言語化してくれる“救い”となるんじゃないでしょうか?
働かないおじさんという職業になること、マインドセットに移ろいゆく現代でできる生存戦略・・・一瞬、「プロフェッショナル仕事の流儀」でも見ているのか?って気分になりました。
どうやらこの本は、だらける方法・裏技的なものを教えてくれるわけではなさそうです。
そこを勘違いしなければ、良本だと思います。
普通に、イチ職業人としての心得が書いてあるような気がしました。
職業:働かないおじさん(あるいは おばさん)を志す人は、手に取ってみてはいかがでしょうか?