経験者こそ唸る、“投資の本質”を突く一冊
すでに株式投資をしている私にとって、このタイトルは非常に挑発的に感じました。
「初心者は株を買うな!」――いや、もう買ってしまっています(ちなみに株を初めて買ったのは19歳の時)。
そんな反発心と好奇心が入り混じったまま手に取った本書は、予想を遥かに超えて“深い”内容でした。
著者の内藤忍氏は、投資の世界を長年見つめてこられたプロフェッショナルです。
その内藤氏が「初心者は株を買うな」と断言される背景には、単なる警告ではなく、“資産運用の本質”を見抜いた冷静な視点があると感じました。
本書を読み進めるうちに、私は自分の投資スタイルを何度も振り返ることになりました。
株式投資は、確かに魅力的です。
情報が豊富で、流動性が高く、短期的な値動きも大きいです。
しかしその分、初心者が“勘”や“雰囲気”で飛び込むには、あまりにもリスクが高いと感じます。
著者は、株式投資を「資産運用の一部」として位置づけ、まずは全体のポートフォリオ設計から始めるべきだと説かれています。
これは、すでに投資をしている私にとっても、改めて考えさせられる視点でした。
特に印象的だったのは、「株を買うことが目的化してしまっている人が多い」という指摘です。
確かに、私自身も“銘柄選び”や“タイミング”にばかり気を取られ、資産全体のバランスや長期的な視点を見失いがちでした。
本書は、そんな“投資の迷路”に入り込んだ経験者にこそ、地図を与えてくれる一冊です。
また、著者が提唱されている「資産運用の三階建て構造」
- 生活防衛資金
- インカム資産
- キャピタル資産
は、非常に実践的で納得感があります。
株式はあくまで“キャピタル資産”であり、生活を守るための資金や安定収入を生む資産とは切り分けて考えるべきだという考え方は、投資経験者だからこそ深く刺さります。
聞いたことがある言葉だからこそ、きちんと腹落ちさせておこうと思いました。
これまで“株で一発当てたい”という思考が脳のどこかしらにあった私にとって、この構造は冷静さを取り戻すきっかけとなりました。
さらに、著者は「情報に踊らされるな」「他人の成功談に惑わされるな」と繰り返し警鐘を鳴らされています。
これは、SNSやYouTubeで“爆益報告”が溢れる今の時代において、非常に重要なメッセージだと感じます。
私自身も、他人のポートフォリオや売買タイミングに影響されてしまったことが何度もありました。
しかし、本書を読んで改めて思ったのは、「投資は自分の人生設計の一部であり、他人の真似ではない」ということです。
この本は、単なる初心者向けの入門書ではありません。
むしろ、すでに株式投資を始めている方こそ読むべき“再設計の書”と言えましょう。
投資経験があるからこそ見落としていた視点、忘れていた原則、そして“資産運用とは何か”という根本的な問いに、静かに、しかし鋭く答えてくれます。
要するに、タメになりました。